変形性膝関節症
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、関節の軟骨が少しずつすり減って炎症が生じて痛みや腫れを引き起こす疾患です。特に中高年の女性に多い病態ですが男性にも起こりますし、骨折の後や、半月板損傷、前十字靭帯損傷などを放置すると若い人にも起こり得ます。
加齢とともに軟骨が少しずつすり減ってしまうことが原因で起こりますが、肥満や筋力低下、半月板損傷、靭帯損傷、骨折等による変形などがあると早く発症したり進行したりすることが知られています。
発症すると痛みが生じ、やがて階段を上れなくなったり、正座ができなくなったりするでしょう。さらに悪化すると、安静にしていても痛みがあり、歩くのも困難になる可能性もあります。
緩やかに進行していくものなので、悪化させないことが大切です。膝の痛みや違和感に気づいたら、早めに治療を開始するのがよいでしょう。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)とは、膝の関節繰り返しの負担がかかり、関節内の軟骨がすり減ったり骨が変形したりする疾患です。
膝関節には、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)があります。
これらの骨の端には軟骨が付いており、衝撃を吸収する役割をしています。骨同士の直接的な接触を防ぐ役割もあり、軟骨があることで膝関節はスムーズに動けるのです。
変形性膝関節症になり、軟骨がすり減ってしまうと、曲げ伸ばしなどの動きを滑らかに行えなくなり、痛みを覚えるようになります。
また、すり減った軟骨は自然に回復することはありません。そのため、変形性膝関節症になったら、できる限り悪化を防ぐことが重要といえます。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症を発症する主な原因としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
- ︎加齢
大腿骨と脛骨についている軟骨は、1日に何度も擦れるため、年齢が上がるにしたがって軟骨の質が低下して摩耗の程度も著しくなる。また、軟骨の水分量も減るため、ますます剥がれやすくなり、それが関節包を内側から覆う滑膜の炎症を引き起こす原因となる。 - 肥満
膝への過度な負荷によって軟骨の摩耗が促進される。 - 筋力の低下
膝関節の安定性が損なわれやすくなり、膝への負担が大きくなる。 - ︎性別
変形性膝関節症は、特に女性の患者が多く、更年期以降のホルモンの変化が関係するといわれている。 - 外傷や疾病
半月板損傷や靭帯損傷、骨折などのスポーツ外傷などにより関節内に変形が残存した場合には、早期に変形性関節症が発症することが知られている。
これらのうちいくつかの要因が組み合わさって軟骨が徐々にすり減り、変形性膝関節症の発症につながります。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症は発症からの時期によって現れる症状が違います。時期ごとに見られる主な症状は次のとおりです。
時期 | 症状 |
---|---|
初期 | ・歩き始めや起き上がりの際に、膝に痛みやこわばりを感じる ・階段の上り下りや正座をすると痛む |
中期 | ・︎初期よりも痛みが増し、安静時にも痛むようになる ・痛みで階段の上り下りや正座ができない ・膝が腫れ、熱をもつ ・歩くときに「ポキポキ」「ゴリゴリ」などの異音がする |
末期 | ︎・痛みが慢性化する ・︎歩く、座る、立ち上がる、などの日常動作が困難になる ・膝関節の変形が顕著になり、O脚やX脚になる |
変形性膝関節症になりやすい人
次のような方は、変形性膝関節症になりやすい傾向があります。
変形性膝関節症になりやすい特徴 | 理由 |
---|---|
50代以降の高齢の方 | 年齢が上がるに従い、膝関節の軟骨の変性が進行し摩耗が進み易くなる |
女性 | 閉経後のホルモンの変化により、軟骨の変性が生じやすくなる |
肥満 | 膝へ過剰な負担がかかり、軟骨の摩耗が進みやすくなる |
過去に膝を負傷した経験がある | 半月板損傷や靭帯損傷などの怪我によって膝関節が本来の正常な動きを失うために、軟骨への負担が増す |
重労働に従事している | 重いものを持つなど、膝への負担が大きい仕事を日常的にすることで、軟骨がすり減りやすくなる |
膝に負担がかかるスポーツを長年している、または経験がある | ランニングやサッカー、バスケットボール、スキーなど膝を酷使するスポーツを長年続けることで、膝に過剰な負担がかかる場合がある |
関節リウマチなどの既往がある | 関節内で炎症が生じる |
変形性膝関節症の予防
一度すり減ってしまった軟骨は自然に回復しません。
そのため、変形性膝関節症にならないよう、予防を心がけることが大切です。日常生活においては、次のことに気をつけましょう。
- ︎︎肥満の場合は減量する・適正体重を維持する
膝へ過度な負担がかかるのを防ぐため - 肥満
膝への過度な負荷によって軟骨の摩耗が促進される。 - 運動をして筋力をつける
大腿四頭筋やハムストリングスなど膝周りの筋肉を特に鍛える - ︎洋式トイレを利用する
膝を深く曲げる和式トイレは、膝への負担が大きい - 外傷や疾病
半月板損傷や靭帯損傷、骨折などのスポーツ外傷などにより関節内に変形が残存した場合には、早期に変形性関節症が発症することが知られている。
変形性膝関節症の診断と検査
変形性膝関節症を発症しているかどうかは、膝の腫れの有無や痛みの範囲や可動域、歩行の様子などを医師が診察で確認しますが、主に次のような検査によって評価、判断されます。
検査の種類 | 内容 |
---|---|
レントゲン(X線撮影) | 変形性膝関節症の診断で最も一般的な検査。関節の変形の程度や軟骨の減少の程度、骨棘(こつきょく・本来はない場所で成長した骨)の有無などを確認する。変形性膝関節症の進行具合を把握でき、適切な治療法を考えるのに役立つ。 |
MRI検査 | レントゲンでは映らない軟骨や靭帯、半月板の様子を確認する。レントゲンでは異常が見当たらない場合に有効。 特に痛みが激しい場合には、レントゲンで確認し難い「骨壊死」の有無を判断できる |
関節液検査 | 関節内の炎症の性質がわかる場合がある。 ばい菌の感染により起こる化膿性関節炎や結晶性関節炎などは、関節液の性状がことなる。 |
血液検査 | リウマチなど、炎症性関節症によるものかの判別に役立つ。 |
常にこれら全ての検査が行われるわけではありません。
状態に合わせて医師が適切な検査方法を判断し、必要に応じて提案されます
変形性膝関節症の治療・手術
変形性膝関節症の治療法としては、保存療法と手術治療があります。
保存療法とは手術をしない治療方法で、具体的には運動療法、物理療法、薬物療法などが挙げられます。
変形性膝関節症は、症状を悪化させないことが大切であるため、まずは保存療法を実施します。
それでも改善せず、日常生活に強い支障が持続する場合には、手術治療を検討することになるでしょう。
運動療法
膝周りの筋肉の強化とストレッチにより、痛みの軽減と安定性の向上を図ります。
症状がどの段階であっても行う方法です。代表的な運動の例としては以下の2つが挙げられます。
脚上げ体操(SLR)
「下肢伸展挙上」と呼ばれる運動で、略称の「SLR」とは「Straight Leg Raising」の頭文字を取ったものです。
膝や腰のリハビリテーションで用いられることが多く、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)や前脛骨筋(ぜんけいこつきん)、腸腰筋(ちょうようきん)、腹筋などのトレーニングになる他、ハムストリングスや下腿三頭筋(かたいさんとうきん)などをストレッチできます。
一般的に次のように行います。
胴上げ体操(SLR)
1. あおむけになる
2. 片方の膝は立て、もう片方は伸ばしておく
3. 伸ばしている方の足をゆっくり持ち上げる
4. あげた足をゆっくり下す
5. 左右の足を入れ替えて、繰り返す
大腿四頭筋訓練
大腿四頭筋とは、太ももの前側にある大腿直筋(だいたいちょっきん)・内側広筋(ないそくこうきん)・外側広筋(がいそくこうきん)・中間広筋(ちゅうかんこうきん)の総称です。
膝を伸ばす際に働く筋肉で、これらの筋肉を鍛えることで、膝の安定性の向上や痛みの軽減が期待できます。
トレーニング方法にはいくつかありますが、ここでは椅子に座って行う方法を紹介します。
大腿四頭筋訓練
1. 背筋を伸ばし、胸をはった状態で椅子に座る
2. 片方の足を伸ばしながらあげる。あげる高さは床と平行になるくらいまで。
3. そのまま5秒程度キープする
4. 左右交互に20回程度行う
物理療法
機器を用いて膝を温めたり、冷やしたりして痛みを和らげる方法です。筋肉の緊張がほぐれて、動かしやすくもなるため、運動療法を行う前の準備として実施される場合が多いでしょう。
具体的には次のような方法があります。
- 温熱療法
赤外線やレーザー、ホットパックなどを用いて膝を温める。家庭では、温めたタオルや温湿布などを使って行える。 - 電気刺激療法
電気刺激によって膝の痛みを和らげる - 超音波療法
患部に高周波による振動を与えて温める
また、膝に腫れがあったり、熱を帯びているなど、炎症があると思われる場合は温熱療法は避ける必要があります
薬物療法
運動療法を実施したくても、痛みのあまりできないような場合は、薬物療法によって鎮痛や炎症の抑制を試みます。
湿布や塗り薬などの外用薬を用いたり、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服をしたりするケースが多いでしょう。
また、ヒアルロン酸やステロイド製剤を関節内に注射することもあります。
ヒアルロン酸は関節の動きの円滑化、ステロイド製剤は痛みや炎症の軽減が期待できるでしょう。
ただし、薬物療法では根本改善はできません。
運動療法を行うための一助として用いられます。
特に、消炎鎮痛剤(痛み止め)の長期の服用は弊害も指摘されています。その必要性や薬剤の選択は医師とご相談ください。
手術療法
保存療法を一定期間施行しても改善が見られず、「痛みが軽減しない」「歩けない」といった状態にあって日常生活の支障が著しい場合は、手術による治療を検討します。
その場合、関節鏡手術や人工膝関節置換術などを行うことになるでしょう。
関節鏡手術は、関節鏡と呼ばれる小型のカメラを挿入して行う手術です。
関節の内部の映像を確認しながら、破損した軟骨の除去などを行います。
体への負担が少なくて済むため、高齢者など体力に不安のある方にとって、メリットの大きい方法といえるでしょう。
しかし、その効果は一過性で長期の効果は見込めないことが知られています。 必要性については主治医と慎重にご相談下さい。
高位脛骨骨切り術は、脛骨(すねの骨)の一部を切って人工骨を挿入してプレートで固定することで、O脚を改善してすり減った内側の軟骨への負担を減らす方法です。
関節自体には人工物を挿入しないので人工物の緩みは生じませんし、骨癒合が得られれば比較的強い負荷をかけることができます。
変形の程度が比較的軽度で、術後にスポーツや重労働などへの復帰を希望するなど活動性が高い場合に適しています。
一方、人工膝関節置換術は、自身の関節を人工の関節に置き換える 手術です。関節の変形が進行してしまい、もはや骨切り術では対応が難しい場合に選択されます。
全体を置換する全置換術と一部分のみを置換する単顆置換術とがあります。
単顆置換術はその適応が限られますが、いずれの術式も術後は痛みの軽減が期待でき、生活の質が大幅に改善することが知られています。
但し、15年~20年レベルの長期においては人工関節が緩くなり再置換を要する場合があるため、術後は筋力訓練を含むリハビリテーションの施行が望ましいと考えられています。
最近は新しい機種が開発され長期の予後も改善しています。
症例によっては、人工関節置換術後の自転車や自動車運転、ゴルフやテニスなど軽度のスポーツへの復帰も可能ですが、野球やサッカー、ラグビーなどの激しいスポーツへの復帰は推奨されません。
当院の特徴
01
スポーツ整形外科や膝、
肩を中心とした豊富な手術実績
2015~2019年で1,000件以上の手術を実施!
専門性の高い関節鏡視下手術にも対応
当院では、膝関節および肩関節の専門医が在籍し、過去5年間でスポーツ整形外科や膝、肩の手術を1,000例以上実施しています。さらに、専門性の高い鏡視下手術にも対応し、膝の鏡視下手術では、民間医療機関では数少ないJOSKAS(日本膝関節鏡)の関節鏡技術認定者が在籍しています。
02
医療×介護の連携!
当院で一貫して対応!
早期の日常生活への復帰をサポート
当院では、周辺地域にお住まいの方の心身ともに健やかで充実した生活を送っていただくべく、医療のみではなく介護によるサポートも提供しています。併設するヘルスケアブランド「すまいる」と連携することによって、医療と介護の複合的な支援の提供が可能です。
03
医療設備の充実で
高度な検査・治療・リバビリに対応
MRIや体外衝撃波治療器、パワープレート、
その他様々なリハビリ機器を導入
当院では、MRIやデジタルX線装置、超音波診断装置などの医療機器を備え、高度な検査・治療に対応可能です。さらに、体外衝撃波治療装置やその他のリハビリテーション機器、パワープレートなどのマシンを設置したトレーニング施設も充実しており、患者様一人一人に適したリハビリテーションが行える環境を整えております。
04
スポーツに精通した
医師・スタッフが在籍
競技特性に応じた
治療・手術、リハビリを実施
当院では、スポーツ医学を専門とする医師が複数名在籍し、スポーツによる障害の診断や手術、リハビリテーションまで積極的に取り組んでいます。また、理学療法士やスポーツトレーナーを含むリハビリスタッフが、競技特性に応じた治療やリハビリを行い、早期のスポーツ復帰を支援します。
05
大学病院に匹敵!
約20名の理学療法士が在籍
日常生活やスポーツへの
早期復帰を専門スタッフがサポート
理学療法士とは、ケガや病気で身体に障害のある人に対し、「立つ」「歩く」などの基本的な動作の維持・回復を目指し、「運動療法」や「物理療法」を用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門家です。当院では、約20名の理学療法士が在籍しており、高い精度の検査や治療が可能です。
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サイト監修者について
整形外科河村医院 院長
河村 禎人
スポーツ整形外科や膝関節の治療を専門として努め、一般整形外科以外にも関節の変形による痛みに対してのリハビリなど手術によらない治療にも取り組んできました。
また、前十字靭帯断裂や半月板損傷などの膝関節鏡手術を中心として、スポーツ外傷、障害の手術やリハビリに取り組んでいます。